2021年に成立した「意匠改正法(知的財産に関する諮問委員会の対応)」による、オーストラリアの意匠法2003年(Cth)への改正により、オーストラリアの意匠法はより柔軟になり、登録制度はより合理化されました。
2022年3月10日付けで発効した主な改正点は以下の通りです。
グレースピリオドの導入
グレースピリオドの導入は、この法律の最も大きな変更点です。旧法では、意匠登録出願をする前に、意図的または不注意で創作者が公開した場合、その意匠は先行技術となっていまい、オーストラリアで登録されませんでした。
この法律には、創作者が意匠を公開してから登録出願するまでに最大12か月のグレースピリオドが認められる規定が新たに含まれ、オーストラリアの意匠法制度は、アメリカ合衆国などの他の国の制度と同等になりました。
グレースピリオドの規定は、2022年3月10日以降に行われた公開または実施にのみ適用されます。
先使用に対する侵害免除
新たに導入されたグレースピリオドは、意匠権者ではない人であって、グレースピリオド中に意匠を利用した人に対して不確実性を生み出す可能性があります。
したがって、先使用による免除もこの法律に導入されました。登録意匠の優先日前に意匠を実施した第三者は、登録意匠の侵害を回避できます。
この免除は、権利者と第三者の利益の間で合理的なバランスをとることを目指しており、創作者が、12か月のグレースピリオドの満了日ぎりぎりに意匠出願を行うなど、意匠を公開した後、意匠出願を行うまでに創作者が長く待つリスクを軽減することを目的としています。
無実の侵害者に対する救済
オーストラリアの意匠は、登録前に公開されないため、出願から登録までの間に誰かが意匠を使用した場合、意匠の侵害のリスクにさらされます。
無実の侵害者であると判断された場合、裁判所は、損害賠償の支払いを拒否したり、損害賠償を減額したりすることができます。無実の侵害者の抗弁を主張するには、意匠出願の存在を知らなかったこと、知る合理的な手段がなかったこと、そして意匠が登録されているかどうかを確認するために合理的な措置を講じていたことを証明する必要があります。
独占的ライセンシーの侵害訴訟提起権
以前は、意匠が侵害されたと申し立てられた場合、登録意匠権者のみが訴訟を起こすことができました。オーストラリアの登録意匠権者のほとんどは、オーストラリアに居住しておらず、費用を理由に訴訟に参加することを躊躇することが多いため、独占的ライセンシーは比較的不利な立場にあります。
この法律により、登録意匠の独占的ライセンシーは、意匠権者の関与なしに、その名義で侵害訴訟を起こすことができるようになりました。これにより、第三者が意匠権を侵害した場合に、権利者に通知したり、判断を委ねたりすることに費やす時間と費用を節約したりすることができます。
公開オプションの削除
この改正法では、意匠出願の際に公開を要求するオプションも削除されました。公開の目的は、登録を追求せずに戦略的に意匠を先行技術に加えることでした。しかし、このオプションはほとんど使用されておらず、個々の出願人にとってどのオプションを選択すべきかという曖昧さを生じさせていました。
さらに、この改正法では、出願日から6か月以内に登録が要求されない場合は、自動的に形式審査が行われるように導入されました。旧法では、意匠出願は6か月以内に登録が要求されない場合は失効していました。
意匠登録の更新
意匠権者が更新の猶予期間である6か月以内に更新料を支払わなかった場合、第三者が登録意匠の侵害に問われるかどうかは不明瞭でした。改正法では、その期間内に更新料を支払った場合、登録意匠は、消滅しないことが明確にされています。
当業者テストの基準
この法律は、裁判所の「情報に精通したユーザの基準」テストを、より厳格ではない「当業者の基準」テストとして明確化することで、訴訟リスクも軽減しました。情報に精通したユーザとは、その知識と属性に基づいて、意匠が全体的な印象で実質的に類似しているかどうかを判断する架空の人物です。この法律では、この仮想人物は問題の製品の「ユーザ」である必要はなく、製品または類似の商品に精通している人物であればよいと規定されています。新しい当業者テストの規定は、2021年9月11日から発効されています。
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