コンピュータ関連の発明の保護に関する運用は国ごとに大きく異なります。特に、米国や欧州で審査の厳しさが問題になりがちですが、オーストラリアにおいても注意が必要です。本記事では、コンピュータ関連の発明の保護について、日本とオーストラリアの比較を行います。
新規性と進歩性
まず、コンピュータ関連の発明の新規性と進歩性については、日本とオーストラリアとの両方の国において、基本的には、請求項に記載されているそれぞれの構成が既知であるか、また、当業者の知識水準に基づいて引用文献から容易に想到できるかが判断されます。
発明該当性と特許適格性
次に、日本の発明該当性と、オーストラリアの対応する規定として特許適格性(Patentable Subject Matter)とを比較します。
日本の規定は、諸外国と比べて比較的緩いです。すなわち、ソフトウェアによる情報処理が、コンピュータやその構成要素等のハードウエア資源を用いて具体的に実現されていれば、発明に該当すると判断され、産業上利用可能性(日本特許法29条1項柱書)の拒絶理由は通知されません。したがって、後述するオーストラリアのケースのような側面からアプローチする必要は特にありません。
一方で、日本と異なり、単に、コンピュータに方法やビジネスモデルを実行させるだけでは、オーストラリアの特許適格性は非常に認められにくいです。特許適格性の要件を満たすには、単にコンピュータで「何を」行っているかではなく、コンピュータ自体の動作がどのように改善されているかが求められます。コンピュータ自体の動作を改善する発明の例として、データを従来よりも高速に処理する方法や、より効率的にデータを保存する方法等が考えられています。
また、IP Australiaは、特許適格性を満たすものとして以下の3つのケースを紹介しています:
- メッセージングアプリ
- 発明の内容:送受信および保存されるメッセージのセキュリティを向上させるために、新しい暗号化アルゴリズムを実装したアプリ。
- 理由:発明の本質が、データセキュリティを高める技術的な革新にあるため。
- モバイルアプリ(職場の危険報告)
- 発明の内容:位置データと画像データを組み合わせて保存するためのデータ構造が改善され、関連データの保存および取得がより効率的に行うことを可能とする、職場の危険を報告するためのモバイルアプリ。
- 理由:発明の本質が、コンピュータ内におけるデータ保存方法の技術的な改善にあるため。
- ゲームアプリ
- 発明の内容:ユーザーが単語パズルで単語を効率的に入力したり、賭けの選択肢を少ないクリックや操作で選んで確定したりできるように、ユーザーインターフェースの操作性が改善されたゲームアプリ。
- 理由:発明の本質が、ゲーム操作の利便性を高める技術的な革新にあるため。
したがって、オーストラリアに出願を予定しているコンピュータ関連の発明について、こういった技術的な側面から発明がカバーされているように、明細書の作成の時点で注意しておくことがベターとなります。
もし、特許適格性が拒絶理由として挙げられてしまった場合、その拒絶理由を解消できるか否かは不確かであると一般的に考えられております。なお、審査において拒絶理由が解消しなかった場合は、ヒアリングによりその妥当性を審議にかけることができます。しかしながら、この拒絶理由の解消をめぐって、毎年多くのヒアリングが申し立てられていますが、審査官の決定は覆っていないケースの方が多いようです。
したがいまして、特許適格性を指摘された場合は、当該拒絶理由が解消しない可能性も視野に入れて応答する必要があります。
発明該当性に応答する際には、例えば、以下のような観点で反論することが考えれられます。
- 発明の貢献は技術的性質を有するかどうか
- 発明が、コンピュータの内部または外部における技術的な課題を解決するものであるかどうか
- 発明が、処理されるデータの内容や種類に依存せず、コンピュータの機能自体を改善するものであるかどうか
- 発明が、単なる汎用コンピュータによる既存手法の単純な実装にとどまるものではないかどうか
オーストラリアの特許適格性に関して困りごとやご質問がある場合はお気軽にお問い合わせください。


